スタートアップの営業組織立ち上げは、「とりあえず人を採って動かす」では絶対にうまくいかない。勝ち筋が固まる前にKPIだけを置くと、追えば追うほど方向が分散する。逆に戦略だけ作って実行が後回しになれば、数字は1ミリも動かない。重要なのは、戦略・組織・実行を並走させながら、初期90日で「自走できる骨格」を作り切ることである。本稿では、ビズグロがクライアントの営業組織立ち上げで実際に最初の90日に何をしているのか、プロセスとアウトプットを開示する。
90日間ロードマップ全体像|DIAGNOSE → BUILD → SCALEの3層構造
90日間で並走する6つのワークストリーム
※ 6つのワークストリームを「同時並行」で進めるのがビズグロの特徴。実行しながら戦略を更新し、戦略を更新しながら組織を作る。
90日間は「上流から下流に順番に流す」のではなく、6本のワークストリームを並走させながら相互に検証する設計である。実行のなかで戦略が磨かれ、戦略の更新が組織設計に反映される。これが「最短で勝ち筋を見つけ、組織に染み込ませる」プロセスの本質である。
DAY 1-30|DIAGNOSE|勝ち筋を「言語化」し、最初のターゲットを決め切る
PHASE 1 / DIAGNOSE
勝ち筋の特定とICP定義
Week 1|現状診断
受注/失注/継続顧客の徹底ヒアリング。CEO・営業・CSの認識ギャップを可視化し、現状KPIをファネルで再構成する。
Week 2|ICP・キーポテンシャル抽出
過去顧客の共通点(業界・規模・体制・導入動機)を分析し、ICPとキーポテンシャルを定義する。
Week 3|勝ち筋仮説の言語化
「誰の/どんな課題に/何で/いくらで勝つか」を1枚にまとめ、経営層と合意する。
Week 4|Tier 1〜3 リスト初版
投資意欲×LTVの2軸でTier分け。Tier 1は10〜30社に絞り、決裁者バイネームで特定する。
DELIVERABLES(成果物)
現状診断レポート/ICP・キーポテンシャル定義書/勝ち筋仮説1枚/Tier1〜3ターゲットリスト初版/90日KPIプラン
このフェーズで最も重要なのは、「現場の感覚」と「データ」を突き合わせることである。経営者が信じている勝ち筋と、実際の受注データから見える勝ち筋は、ほぼ必ずズレる。このズレを最初に潰すかどうかで、残り60日の質が決まる。
DAY 31-60|BUILD|組織・プロセス・SFAを同時に立ち上げる
PHASE 2 / BUILD
組織・プロセス・実行基盤の構築
Week 5|組織・役割設計
マーケ/BDR/フィールド/CSの役割境界を再定義。引き継ぎ条件(パーミッション基準)まで明文化する。
Week 6|営業プロセスの可視化
リード→商談→受注のフェーズ定義、ステータス遷移条件、必須記録項目をすべて言語化する。
Week 7|SFA/CRM設計
プロセス定義に沿ったSFAのカスタマイズ、ダッシュボード設計、入力ルール/レビュー会の運用枠を組む。
Week 8|ファーストアプローチ実行
Tier別の文面・チャネル設計を完成させ、Tier 2・3を中心に最初のアウトバウンドを発射。Tier 1は紹介・手紙・LinkedInで関係構築開始。
DELIVERABLES(成果物)
役割定義書/営業プロセスマップ/SFA運用ガイド/Tier別アプローチ文面テンプレ/週次レビュー会の運用設計
このフェーズの肝は、「動かしながら整える」ことである。完璧なプロセスを設計してから動き出そうとすると、PMF前のスタートアップは絶対に動けない。最低限の骨格を作ったら、即実行に乗せ、週次で更新する。実行を止めない設計が、結果として一番速く整う。
DAY 61-90|SCALE|PDCAを高速化し、内製化への移行を始める
PHASE 3 / SCALE
PDCAの高速化と自走化への移行
Week 9|ファネル分析と勝ち筋更新
接続率/パーミッション獲得率/商談化率のボトルネックを特定し、ICP・文面・チャネルを更新する。
Week 10|パイプライン管理の運用化
SFAダッシュボードを使った商談レビュー会を定例化。詰まり案件の打ち手をフォーマット化する。
Week 11|社内メンバーへのナレッジ移管
勉強会・OJT・ペアレビューで型を内部化。文面、リスト、PDCAの判断軸を社内が回せる状態にする。
Week 12|自立フェーズへの引き継ぎ計画
支援比率を段階的に下げる計画を合意し、次の90日のKPI/責任分担/レビュー会の運用主体を社内へ移す。
DELIVERABLES(成果物)
ファネル分析レポート/パイプラインダッシュボード/ナレッジドキュメント/自走化ロードマップ/次の90日アクションプラン
90日目に求めるのは「契約終了」ではなく「自走できる状態の発見」である。社内メンバーが意思決定し、改善サイクルを回せている状態が見えた時点で、ビズグロは自然と裏方に回る。これがビズグロのゴール定義である。
90日間で動く主要KPIと、各フェーズで「見るべき指標」の切り替え
フェーズごとに重視するKPIは「変える」
DAY 1-30
行動量 × 仮説検証
- ヒアリング件数
- ICP定義の解像度
- Tier 1リスト確定数
DAY 31-60
接点創出 × プロセス整備
- アプローチ実施件数
- 接続率(電話/返信)
- SFA入力率/プロセス遵守率
DAY 61-90
転換率 × 内製化進度
- パーミッション獲得率
- 商談化率/パイプライン金額
- 社内メンバー単独運用の割合
※ 立ち上げ初期から商談数だけを追うと、リサーチとプロセスが薄くなり、長期の打率が下がる。フェーズに応じてKPIを「切り替える」ことが成功要因となる。
ビズグロが90日で「必ず作る」5つのアセット
勝ち筋ステートメント
「誰の/どんな課題に/何で/いくらで勝つか」を1枚で示す経営合意ドキュメント。
Tier別ターゲットリスト
Tier 1/2/3に分けた企業×決裁者リスト。営業・マーケが同じ視界で動ける土台。
営業プロセス&SFA運用
フェーズ定義、ステータス遷移条件、入力ルール、ダッシュボードの一体パッケージ。
アプローチ文面テンプレ
Tier別/業界別/決裁者別の文面と、書き換えルール。打率主義の運用前提で設計。
自走化ロードマップ
外部支援を段階的に外す計画、社内主体のレビュー会設計、ナレッジ蓄積の仕組み。
これらは「ビズグロが持っている資料」ではなく、「クライアント企業の社内に残る資産」である。契約終了後も、これらを更新しながら使い続けられる状態にすることが、ビズグロの最終ゴールである。
よくある質問|「最初の90日間」に関するQ&A
Q1. 営業責任者がまだいない状態でも始められるか?
問題なく始められる。むしろ責任者採用と並走するケースは多い。90日間で勝ち筋・プロセス・SFA・KPIの土台が出来ているため、新任の責任者が入った瞬間にトップスピードで動けるよう設計する。
Q2. 90日で受注は出るのか?
Tier 3中心の短サイクル商材であれば90日内に受注が出ることもある。一方で、Tier 1のエンタープライズは商談化まで数カ月〜1〜2年の前提で設計する。90日のゴールは受注金額ではなく、「自走できる組織状態」と「健全なパイプラインの形成」である。
Q3. 営業代行との同時併用はできるか?
可能である。短期の数字創出を営業代行で、勝ち筋設計と組織構築をビズグロで、と分担するケースもある。ただし最終的には内製化を前提にした設計に揃えることを推奨している。
Q4. SFAを未導入だが大丈夫か?
むしろSFA未導入のタイミングこそ最適である。プロセス設計と並行してSFAを構築できるため、後から「使われないツール」が増える事態を防げる。既存ツール環境がある場合は、その上に運用設計を載せ替える形で進める。
Q5. 90日のあとは何が起きるのか?
「伴走→自立」フェーズへ移行する。支援比率を段階的に下げ、社内メンバーが意思決定・改善サイクル・採用・育成を主導する状態に持っていく。最終的にビズグロは裏方の壁打ち相手として機能する位置づけになる。
最初の90日は、スタートアップの営業組織が「属人化に染まる前に、仕組みを先に置く」ための猶予期間である。勝ち筋を1枚で言語化し、Tier別ターゲットを決め、プロセスとSFAを並走で立ち上げ、Tier別文面で接点を作り、ファネルKPIでPDCAを回す。そして90日目には、社内メンバーがその仕組みを回せる状態を作ること。これが、ビズグロが最初の90日間に必ずやり切ることである。営業組織は「採ってから整える」ものではない。「整えながら採る」もので、そのスタートダッシュこそが、スタートアップの事業成長スピードを決める。
今週中にできる3アクション
- 自社の勝ち筋を「誰に/何で/いくらで勝つか」の1文に言語化してみる
- 過去12カ月の受注・失注を一覧化し、共通点を3つ抽出する
- 営業プロセスの「フェーズ定義」と「次フェーズに進む条件」を紙1枚で書き出す
