CEO note

スタートアップ転職の年収実態|大企業との差とリアルな条件

「スタートアップに転職したら年収が下がる」──そう聞いて踏み出せない人は多い。しかし、2026年の現実はもう少し複雑だ。

日経新聞の2025年度NEXTユニコーン調査によれば、有力スタートアップの正社員平均年収は777万円。日本の給与所得者平均460万円を大きく上回り、前年比2%増と上昇傾向が続いている。一方で、アーリーフェーズのスタートアップでは年収が下がるケースも依然として存在する。

本記事では、スタートアップ転職における年収の実態データ・ストックオプションの現実・年収より重要な「経験の資産化」という視点まで、実務目線で整理する。

777万円
有力スタートアップ
正社員平均年収(2025年度)
863万円
JAC調べ スタートアップ
転職成功者の平均年収
460万円
日本の給与所得者
全体平均年収

スタートアップ転職で年収はどう変わるか──フェーズ別の実態

スタートアップの年収は、フェーズによって大きく異なる。「スタートアップ=低年収」という認識は、シード・アーリー期の話であることが多い。シリーズBを超えた成長期のスタートアップでは、大企業と同等かそれ以上の年収水準を提示するケースも増えている。

フェーズ 年収目安 特徴
シード期 300〜500万円 固定給は低め。SO付与率が高い。裁量は最大
アーリー期 400〜650万円 調達額により変動。業績連動インセンティブあり
グロース期(Series B〜) 600〜900万円 大企業水準に近づく。評価制度が整備されてくる
IPO準備〜上場後 800〜1,200万円+ SO行使による資産形成も。大企業超えも珍しくない

ストックオプション(SO)の期待値と現実

スタートアップ転職で「年収を補う」として語られるのがストックオプション(SO)だ。入社時・入社後合わせると、50%以上の転職者がSO付与を受けているというデータもある(ONE CAREER PLUS調べ)。しかし、その実態はどうか。

⚠️ ストックオプションを「年収の代替」と考える前に知るべき3つの現実
  • ① 行使できるとは限らない:未上場のままM&AやCloseになれば価値はゼロ。日本のスタートアップIPO数は2024年の64社から2025年は41社に減少している
  • ② 正社員の7割超が制度内容を理解していない:行使価格・行使期間・税務処理を正しく理解した上で判断することが必須
  • ③ 年収ダウンを伴うオファーでも68.4%は「現年収維持を選ぶ」:SO付きオファーへの期待は高まっているが、実際の意思決定では年収を優先する傾向が依然強い

SOを適切に評価するには、「行使価格 × 想定株数 × 上場確率 × 希薄化率」という計算式で期待値を算出する必要がある。感覚的な「将来の大きな報酬」として処理するのではなく、ひとつの金融資産として冷静に評価する姿勢が重要だ。

年収より重要な「経験の資産化」という視点

スタートアップ転職で最も見落とされがちな価値が、「経験の資産化」だ。大企業では10年かかる意思決定の経験が、スタートアップでは2〜3年で積める。この「経験の密度」こそが、転職後の市場価値を決定づける。

📊 スタートアップで得られる「経験資産」の例
  • 0→1の事業立ち上げ経験:大企業では担当できない「ゼロからの構築」が可能
  • P&L責任を持つ経験:予算管理・KPI設計・意思決定の全責任を担う
  • 採用・組織設計の経験:チームを作り、壊し、再構築する実務
  • 投資家・経営層との対話経験:VC・エンジェルへの説明責任と戦略議論

転職成功者に共通する「年収交渉」の3つのポイント

✅ 年収交渉で差がつく3つのポイント
  1. 現年収ではなく「市場価値」を根拠にする:JAC・ビズリーチ等の複数のオファーを取得し、「市場での評価」として提示する
  2. 固定給 × SO × インセンティブの総報酬で比較する:固定給のみで比較せず、SOの期待値・業績連動賞与も含めたトータルで判断する
  3. 入社後の評価タイミングを確認する:「半年後に見直し」など、具体的な評価・昇給のタイミングをオファー時に合意しておく

まとめ:年収だけで判断しない、スタートアップ転職の選択軸

スタートアップ転職において、年収は「唯一の判断軸」ではない。有力スタートアップの平均年収777万円というデータが示すように、成長フェーズの企業では大企業水準の報酬も現実的になっている。一方でシード・アーリー期では、短期的な年収ダウンを受け入れてでも得られる「経験の密度」がある。

重要なのは、「今の年収」ではなく「3年後・5年後の市場価値」で判断することだ。スタートアップで積んだP&L責任・組織設計・0→1の経験は、次のキャリアで必ず差別化になる。年収の比較は入口に過ぎない。